2010年 イエールオリンピックウイーク (フランス・イエール) 報告 4月30日 大会最終日
2010年05月01日 | コーチの声
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最終日もシーブリーズが吹くのを待ち、岸から約2キロほど離れたところに作られたコースでメダルレースがおこなわれました。日本では昨年の470級全日本選手権大会(福岡県・小戸)で初めてメダルレースが実施され、今後も少しづつ増えていくと思われますので、参考までにコースの設定につき紹介します。
35フィートぐらいのボートが本部船、アウトサイドリミットマークには20フィートほどのラバーボート、スタートラインの100メートル風上に2個のブイによるゲートマーク、そして風上マークでコースがつくられました。
スタートラインは、風向に合わせ、こまめにセットしていましたが、私の持つ距離計で計ると常に110メートルの長さでした。コミッティーはGPSを使い、て0.06マイルの長さでセットしていたと思われます。ラインの傾きは、かならずアウトサイドリミットマークを5度有利に傾けていました。また、本部船には風向と風上マークまでの距離が表示されていたのですが、風上マークまでの距離は0.35マイル(約630メートル)でした。この距離は、今日の風速2.5から3.5メートルのコンデションでの長さで、風速が上がってくると長く伸ばされたのではないでしょうか。
さて、肝心のレースのほうですが、12時54分、風向170度、風速2.5から3メートルのコンディションで男子がスタートしました。原田・吉田組は、左から2番目、風下にイスラエル、風上にはスエーデンが並びました。どの艇に対しても、遜色ないスタートをして、そのままレイライン近くまで走りました。ただ残念なことに、スタートして約1分30秒後、風が10度ほど右に振れました。それでも並んでいた周りの艇に走り負けることはなく、少し頭を出す傾向にあり、走り自体は悪くなかったのではないかと考えます。風が右に振れること、右の岸方向に強めの風が吹いていること、それらを読んだと思われるイタリアがスタート後にタッキングをして右に展開し、風上マークをトップで回航しました。どして右を選択したのかといえば、スタートが始まる少し前に、フランスの女子が右の海面で練習をしていて、強めの風を受けて走っていたのを見ていたのでしょう。また175度で始まったレースでしたが、その前に一度、220度からやや強めの風が入り、コースをセットしかけたことも、徐々に右に風が振れて行くと読んだ根拠になったのではないでしょうか。風上マークを9位で回航した原田・吉田組は、風下マークで6位、第2風上マークで7位、フィニッシュも7位という順位で、集計の結果、この大会を5位の成績で終わることとなりました。
私は、どんなレースでも、また、誰に対してもスタート前に、コースの選択に関し、指示することはありません。老いぼれたとはいえ、自分ではまだ、「いざ鎌倉!」のつもりでいます。スタートが始まる前に、どの様にスタートし、コースをどう取るかということは、私なりに考え、決まっています。しかし、それを『コーチたる者、絶対に口にすべきではない』の教えを金言として守っています。その教えは、1984年ロスアンゼルスオリンピックに於いてアメリカに金メダルラッシュをもたらしたと言われるロバート・ホプキンス氏が日本ヨット協会の招聘に応じて来日、1986年、横須賀市・佐島マリーナで実施されたナショナルチーム強化合宿の夜のミーティングで話されたものです。「臨機応変に判断し、対応しなければならないレースにおいて、選手の思考を方向付けてしまったり、選手の判断のさまたげとなる。ひいてはそれを失敗の原因とし、反省もせず成長もしない。」というのがその理由です。少し違うかもしれませんが、例を挙げるのなら、子供に「あれをしろ、これをしてはダメ」と、何から何まで指示する子育ては良くないということになるのでしょうか。
レースの報告から、また話がずれてしまいました。男子に引き続き行われた女子のレースは、風が平均で0.5メートルほど上がり、風向も右に振れ、230度のコースでおこなわれました。左から3番目に並び、風下にはイタリアがいました。現在もランキング1位のイタリアですが近藤選手とスタートで並ぶのをよく目にします。狙うポジションが同じということもありますが、イタリアは近藤選手の風下に位置するのを狙っているのではないかと思える節もあります。ランキング2位の近藤選手は1、スタートラインの高さに対する位置取りが低くい傾向にある。2、性格はおとなしく、リコールする程、攻めない(前に出ない)。3、風下にルームを持って待つことが多い。などがその理由としてあげられ、近藤選手より、ちょっと前に出て頭を出せば良いスタートができるということを解ってのことでしょうか。だとしたら、かなりの試合巧者と言えます。この様なケースで90パーセント以上の確率でイタリアとの競り合いに負ける近藤選手に、一昨日、スタートのテクニックについて、話をしたばかりでした。近藤選手にしてみれば、私から聞く話として耳新しいことではありません。今日は、そのイタリアを相手に、絵に描いたようなテクニックで封じ込めました。イタリアが逃げのタッキングをしなければならない状況を作れた近藤・田畑組に逞しさを感じ、嬉しく思います。しかし、イタリアもさすがです。風上マークまでにスタートの劣勢を挽回し、近藤・田畑組より前に回りました。やはり、その力は素直に認めざるをえません。まだ、二三、コース取りに関しての話があるのですが、長くなるのでまたの機会にします。
第1風上マークを9位で回航した近藤・田畑組でしたが、風下マークでは6位に上がり、第2風上マークで、再び9位に落ちました。続くランニングで沖側のコースを長く伸ばし、ジャイブして岸方向に行った先行の集団をごっそり抜くことができました。2位でフィニッシュしたのですが、沖側は、マークの回航直前に風の角度が良くなっていました。風も強く吹いていたことがジャンプアップの要因になり、その風を利用してビリから4位まで上がってきた、イスラエルのクローズホールド走りを見ての判断だとしたら、たいへん落ち着いていたと言えるでしょう。今日の2位で昨日までの5位をキープし、男子同様、5位でイエールを終わりました。
男女共に5位、成績としては悪いとは思いません。むしろその逆でしょう。しかし、自分達の目指すところは、もっと高いところにあります。その頂を考えると、正直な感想は「まだまだ先は長いな~」ということになります。風が強ければもっと良い成績が取れたのかと聞かれれば言葉に詰まります。今大会は風が無かった、弱かったと言うのは、優勝できなかった理由になりません。大会が終わり、明日の朝には、蜘蛛の子を散らしたように選手達は姿を消すでしょう。私達は、ここイエールに残り、数日、練習をしてイタリアのガルダ湖に向かいます。
「イエールの涙はイエールに置いて行く」などと言うと、悲壮感が漂って聞こえるかもしれません。実は、今日のメダルレースを見て、以前から少し気になっていた走らせ方があり、さっそく明日はそれを検証してみたいと思います。そのように明日の練習を考えると、また早く海に出たくなります。
報告を終わります。
470級 男子リザルト
http://sof.ffvoile.net/results/470m.htm
470級 女子リザルト
http://sof.ffvoile.net/results/470w.htm
