2010年 スプリングカップ(マルセイユ) 報告 4月17日 大会4日

小松 一憲

シーブリーズが吹き出すのを待ち、12時30分に出艇するのが、すっかり定着してしまいました。天気予報の精度が上がり、待つことに昔ほどのストレスは感じません。精度の高い同じ情報を選手やコミッティーをはじめ関係者一同が、インターネットを通して共有しているからでしょう。

昨日、スタートの途中で中止になった第7レースが、12時53分に開始されました。風速4から5メートル、風向185±10度、昨日の時点で失格となっている近藤・田畑組、そして松永・今村組は、このレースに出走することはできません。
原田・吉田組は本部船の横、2艇目の位置から出てすぐにタッキングし、右に展開しました。この右を選択したことで、レースはほぼ決まってしまいました。180度方向は、左から高い山の岬が壁の様に突き出しています。さらに右の奥には高く切り立った岩の島があります。シーブリーズが左の岬の温められた岩肌に向かって強く吹いているのでしょうか、左右に分かれた艇の風の受け方を見ていると、左はトラピーズに乗ってクルーがフルに出ているのに対し、右は体を縮めていました。レース前の試走で「左へ左へと風が振りたがっています」と感想を私に伝えていたので、左方向に行くものと思っていました。第1風上マークは、後ろに12艇しかいない30番後半の回航となりました。2回目のクローズホールドも右方向を走り順位を上げることができず、28位でフィニッシュしました。マルセイユに来てボートスピードがアップした風速域だっただけに残念な順位です。

第2レース、13時57分、シーブリーズが少し安定してきました。風速は5から6メートル、第1レースの途中、風上マークと左のサイドマークの中間で、入ってきたパフを計測すると、15度左に振れていました。原田・吉田組は、アウトサイドリミットマークに集まった艇団の中から、まずまずのスタートをして左方向に伸ばしました。近藤・田畑組は、艇団の右の位置で展開していました。左に伸ばした原田・吉田組は、レイラインの外まで走り、オーバーセールする形でレイライン上に並んだ艇の風上をパフに乗って抜き去り、第1風上マークをトップで回航しました。近藤・田畑組の回航は、後ろに十数艇しかいない40位後半、コース選択の左と右で明暗を分けました。途中ダントツになるかと思われた原田・吉田組でしたが、イスラエルの1艇だけが追いついてきました。ランニングのコースで角度をつけて走り、さらにダウンウインドタッキングを上手に使って上がってきました。最終的に10秒差でトップフィニッシュすることができました。近藤・田畑組は45位、原田・吉田組とのスピードの差が無いことを考えると、レースにおいて、レーシングテクニックのウエイトがいかに大きいかということが解ります。

第3レース、15時13分、風速5.5から7.5メートル、風向180度、風速はこの日のMaxとなりました。ブラックフラッグの掲揚された2回目のスタートでライン中央から原田・吉田組、近藤・田畑はアウトサドリミットマーク寄りから出ました。
原田・吉田組は、風下に、トータルでトップのオーストラリア艇、風上に2位のフランス艇、その間に挟まれる形で並んでいました。ラインの中央で並んだ艇がまばらになった所ではあったのですが、この顔触れで並ぶと、その間に入ってこようとする艇はありません。原田・吉田組は、鼻先を出し、気後れせず出て行きました。メインシートを少し抑え気味に引いたフランス艇がすぐに逃げてタッキングしました。その後、原田・吉田組は強引に左に伸ばしました。オーバーセールの所まで行って左振れのパフをつかんでタッキングをし、第1レース同様の戦法で第1風上マークに向かうつもりだったのでしょう。しかし、第1レースの原田・吉田組の成功は皆が見ていました。半数近い艇が左からの風をつかむべく、左に伸ばしすぎ、オーバーセールしていました。それのさらに風上でのオーバーセールですから「大オーバーセール」でした。第1風上マークの1位はスタートの時に並んでいたフランスでした。フランスは、左海面に寄せつつも風の振れに素直対応し、タッキングしていたのでしょう。今日の第1レースはシーブリーズの安定し始め、第2レースは風速のMaxになりかけ、第3レースはMaxと状況は変化していました。「同じ柳の下にドジョウは2匹いない」のたとえを思い出します。

近藤・田畑組はアウトサドリミットマーク寄りの混雑した集団の中でスタートラインに入れず、逃げのタッキングをして右に出たとのことでした。スタートの時点ではビリの位置だったかもしれません。しかし第1風上マークは、原田・吉田組の2艇前、20位で回航しました。リーチングのコースでのコース取りも原田・吉田組は強引でした。20番以下で回航するような時は、タイトリーチは別として、先行している集団に追いつく為に、サイドマークにまっすぐ向かうべきです。まっすぐ走った近藤・田畑組が2艇を抜いて順位を上げたのに対し、原田吉田組は2艇、順位を落としました。ヨットレースのレーシングテクニックとは、まさに臨機応変の塊で瞬時の判断が求められます。「熱くなってはダメ、決めてかかってはダメ、目の前の敵に目を奪われてはダメ」、視野を大きく持って冷静に対応することが肝心でしょう。このレース、第1風上マークを17位で回航した松永・今村組が12位、20位で回航した近藤・田畑組が15位、22位で回航した原田・吉田組は23位でフィニッシュしました。今日で9レースが終了し、原田・吉田組は8位となって、明日のメダルレースに進出します。近藤・田畑組は13位、松永・今村組は17位でした。

このレース、これまでの戦いぶりを振り返ると、風速4から5メートルのボートスピードが良くなったこと、原田・吉田組のスタートが最終日の3レースだけで評価するのはまだ早いかもしれませんが、少し安心して見られるようになったこと、トップをとることにそれほど違和感が無くなり、落ち着いて前を走れるようになったことなどが収穫と言えます。
一方、原田・吉田組に関しては、初日のレースのダントツのトップが良くも悪くも影響しているように思ます。レース運びに「強引さ」や「呑んでかかる」ようなところが目に付きました。そのようなレベルでは、まだまだでしょう。武道で言えば、太極拳のような、力んだところの無い強さが本当の強さであることを胸に刻むべきです。

2位のイスラエル艇に追いつかれながらも、艇団を大きく離し、トップで最終下マークに近づく原田・吉田組の写真を添付します。