
オリンピックを目指す選手たちが、ワンボックスカーに競技用具や身の回りの物を詰めて、
レースを転戦していく様子を表して「ファイブリング・サーカス」といいます。
言い得て妙です。
セイリングは大きな道具を使う競技としては筆頭に上がるのではないでしょうか。
乗馬、カヌーやスキーなども同じように、身一つで試合に出向くという訳にはいきません。
車上にディンギーをくくりつけて、トレーラーを引っ張って走り去るワンボックスカーを
ヨーロッパの高速道路では、しばしば見かけます。陸続きだからこそ可能な『遠征ジャーニー』、
思わず心の中で「ガンバレ!」と声をかけたくなります。
チーム・アビームも毎年、春から夏の終わりまでの約半年、ヨーロッパ遠征に出ます。
オランダ、メデンブリックの『デルタロイド・レガッタ』を終え、遠征もいよいよ中盤に差し掛かってきました。
チームは休む間もなく、次の試合地イギリスに向かいます。
試合を終え成績が良くも悪くも、感傷に浸っている時間はありません。
いち早く次のレース地に向かうべく、準備に取り掛かるのです。
ヒッチメンバー(牽引トレーラーとの連結器)付きのワンボックスにトレーラーを牽いて、コーチボートに、
470艇が2ハイ。
1000キロの道のりを無事走り抜けることが出来るように、細心の注意を払って工夫の上に工夫を重ね、荷造りします。
まさに職人芸、選手も監督も慣れたものです。
あれよあれよという間に手際よく収まっていきます。見事なチームワークです。
オランダ、メデンブリックの朝まだき、5時30分出発。
これからベルギー、アントワープを抜けてフランスのカレイへ、ドーバー海峡を渡って、
次の遠征地イギリスに入ります。
ドーバー海峡の下を通っているユーロトンネルを使うか、フェリーでゆっくり行くか…。
とにかく今日中に着きたい!これが本音です。
交代で運転していきますが、自分のパートでない時は、本を読んだり、音楽を聴いたり、
瞑想したり?!思い思いに過します。
「移動中の車の中だけです。ゆっくり休めるのは…」と近藤選手。
とはいうものの、トレーラーを牽いての移動には言い知れぬ神経を使います。
車移動にはつきもののタイヤのパンク、荷崩れの心配、ストレスは容赦なく襲ってくるのです。
「いやあ、昔はもっとひどかったな。ナビがあるだけでも格段の進歩。今は有難いことに、
車両もトヨタ自動車から提供され、恵まれています。これだけでもどれほど助かるか…。
(私が選手の時は、)一人きりで膝に地図を広げ、昼夜寝ないで走ったりもしました…」と小松監督。
結局、一行はフェリーで1時間半かけ、昼食を取りながら行くことにしました。
カレイのフェリー乗り場では、チームと同じように、見覚えのあるヨットを載せトレーラーを牽くワンボックスカーを何台も見かけました。
さて、ドーバーへは入国審査を経て乗り込みます。つかの間の休息。
1時間ほどするとあの懐かしいドーバーの白い壁が見えてきました。
目的地ウエイマスはロンドンオリンピックのセイリング開催地。
ドーバーからは3時間以上は走らなければなりません。気がつけば朝出発してから12時間を超えました。
宿舎につくと選手たちは荷物を解き、いつものように着々と、オランダを出てきたときと逆の作業をして、いつでも練習に入れるように、日常生活を整えていきます。長時間の移動など、まるで無かったかのように…。
翌朝、会場となるポートランドのセイリング・アカデミーのバースには各地から、
「ファイブリング・サーカス」を経てやってきた選手たちが続々と集まってきました。
さあ、もう間もなく、『セール・フォー・ゴールド』がスタートします。

レースが終わったら、すぐに次のレース地へ向けての移動準備です

長距離を移動するので、慎重に艇をスタッキング

入念に、しかも手早く

翌朝5時30分出発。これからベルギー、アントワープを抜けてフランスのカレイへ、ドーバー海峡を渡って、次の遠征地イギリスへ!

各国チームも皆、次のレースに向けて

オランダは、ずっと昔から風力を活用してきたのですね どうりでヨットも強いわけです

住宅街を抜けて・・・

ハイウェイへ! 他のチームも移動中!

オランダからベルギーへと海側を南下して、フランスはカレイのフェリー乗り場に向かいます。タイヤは大丈夫かな?

これから入国審査 パスポートを確認です

ようやく落ち着いてフェリーの中で食事です

トレーラーと470も荷室で しばし休憩中

英国側のドーバーに到着! まずは給油 これから更に3時間以上は走ります

ロープ緩んでない? 大丈夫?

あー・・・ やっぱりパンク・・・

雨の中、急いでタイヤ交換!

ようやくウェイマスに到着! 雨も上がりました

とりあえず宿に荷物だけ下ろして、トレーラーはハーバーに置きます

翌朝、とるものも取りあえずハーバーへ さっそく470艇の艤装に取りかかる

がんばろう!!NIPPON

いつでもすぐに海に出られるように

ウェイマスの美しい夕日 この地に日の丸を!!
現地レポート:塩澤朋子(フォトウエーブ)
写真撮影:添畑 薫(フォトウエーブ)