小松 一憲

7月18日(大会最終日)、試合を終えて帰港し、約2時間で艇の片づけを済ませ、宿を引き払って3時間後には次の試合地、イギリス・ウエイマスに向け出発しました。ドーバー海峡を越えて徹夜で走り、翌朝6時半にウエイマスに着きました。マリーナの事務所が開くのを待って、艇を保管してもらいました。次にロンドンのヒースローに移動し宿をとり、午後2時、やっと一息つきました。

修理に出した艇をドイツまで取りに行くところから始まり、今年の世界選手権の前後は大変あわただしくなりました。試合前、現地での練習が5日しかできない日程というのも異例です。それもこれも全ては180日の間に90日を超えて圏内国に滞在できないという「シェンゲン協定」の解釈を間違って、日数の「累計」が90日を越える場合はビザが必要であるということを正確に理解していなかった為です。私のミスです。

選手に申し訳ないと思います。ただし試合前後のあわただしさを負けの理由にはしません。原因は他のところにあると考えています。それを見極めず日程のせいにしては、これからの飛躍は望めないでしょう。470級に限らず、今も昔も多くの日本選手が金銭的に苦労をし、休みの関係で日程的にもタイトな遠征をしています。それに対し、私達は何不自由無く日頃の活動と遠征ができる環境を会社が整えてくれています。社員の皆さんの応援は心の支えになっています。なんとありがたいことでしょう。今回は、その支援のありがたさと自分達の環境を考える良い機会になりました。与えられていることに対する「感謝の念」は、どんな時も忘れてはなりません。日常、ひと時をも無駄にしないで練習をするのが選手の基本姿勢であり、感謝することは、それを維持するうえでも必要不可欠と言えます。オリンピックまで中間年の今年、ひょっとすると「幸せボケ」してしまっていたかもしれない私達が、気つけ薬を投与されたように思います。

近藤・田畑組は6位となりました。最終日のメダルレースの内容も含め、今年の試合を振り返えると、惜しい勝負どころを逃す場面が印象に残ります。春先から出場した主要な大会で5から7位という成績が定着してしまいましたが、これをワンランク上げるのはさほど難しいことではないでしょう。ただし、表彰台を確実にするというと話は違ってきます。原田・吉田組の最終レースも前日来の不調を引きずる内容で18位という結果に、全般的な力不足を感じました。
具体的に何をどのようにして行くのか、静かに考えたいと思います。いくつかのアイデアはすでに浮かんでいますが、焦ることなく考え、同時にひらめきを待ちたいと思います。
謙虚に一から出直す気持ちでいることをお伝えし、皆さまの応援に選手共々感謝し、お礼申し上げます。ありがとうございました。

Team ABeam スタッフ

最終日です。
泣いても笑っても今日でオランダ、ハーグ/スヘフェニンゲンにて開催された『470級世界選手権大会』はフィナーレの幕を落とします。
ラストデイを飾るにふさわしい(?!)、穏やかに晴れあがった美しい日曜日です。

ビーチにもハーバーにも人が溢れかえっています。
南西の風12ノット。午前11時出航。
バンピーな海にすっかり慣れてしまった体には、なんか物足りなくて、まるでピクニックに行くような気分です。
気がつくと周りは観覧ボートやヨットで埋め尽くされています。

午前中は男女とも上位10チームを抜いた残りのチームで順位決定戦が行われます。
午後1時55分、いよいよ観光客で溢れかえったビーチの前の海面で、(上マーク、下マークを其々2回廻るコース)メダルレースが行われれます。
最後までアタフタと慣れない様子の運営でしたが、最後はメディアへのアッピールも完璧。朝からスポーツニュースで流れ、何と海上にはライブカメラも含め5局のTVカメラが、 上空には撮影用ヘリコプターで、今大会のフィナーレをしっかり押さえます。
GBRは2012年五輪に向けて、スカンディアグループ専属のTVクルー送り込んできています。
報道体制一つとっても、日本との温度差を感じずにはいられません。
関わる人々の情熱が大衆を突き動かすのです。

大会の運営側にはリタイアしたお年寄りのボランティアで支えられています。何方もキラキラと輝いて、
張り切って仕事しています。プレスボートもボランティア。
我々が気に入っている頼りになるプレスボートのドライバーはとても勘がいいと思いきや、「20年前はここでよくセーリングしていたんだ…」と…、セイラーでした。
「荒城の月」を見事に口ずさむキャップテンもいます。

さて、41カ国、男子119チーム、女子62チーム、360名余り選手を迎えての大会は、男子は常連オーストラリアのベルチャー・ペイジ組が優勝、北京五輪銅メダリストの仏、シャルボニエ・ニコラスは銀メダルと手堅いところでまとまりました。
女子は新星ニュージーランド、ジョー・アレが大活躍で、もしや優勝かと思っていましたが、流石ベテラン、オランダのリサ・ウエスタホフが地元の強みに加えて見事な試合巧者なレース運びで逆転しました。
日本からは男子5チーム、女子2チームが参戦してましたが、残念ながらメダルレースに出られたのはチーム・アビーム近藤・田畑組だけでした。
彼女たちは総合6位で、男子、原田・吉田組は18位でした。
まだまだ世界のの壁は厚いの感はありますが、チームアビームは精一杯健闘しました。お疲れ様でした。
試合後、彼らはいつものように手早く荷物をまとめ次の試合地、英国ウエイマスへと旅立って行きました。

件の日本びいきのプレスボートのキャプテンは別れ際「お・に・ぎ・り!!」と叫びました。
どうやら「さ・よ・な・ら!」と言ったつもりだったようです。
ありがとう!スへフェニンゲンの皆さん!

現地レポート:塩澤朋子/PHOTOWAVE
写真:添畑薫/PHOTOWAVE

小松 一憲

曇りのち晴れ、にわか雨の中を9時45分に出艇しました。雨はほどなく止み、西の空に青空が見えてきました。しばらくして大きな黒い雲が西南西の方向に出現し、やがて頭上に広がって通過していきました。雨をパラパラと落としながら通過した後は、一気に青空が広がり、それまで190から200度で吹いていた風が西南西(240度)に振れ、風速も増し、安定しました。

第1レース、11時5分、風向195度、風速5から7メートル、潮流は210度方向から約1ノット、女子からのスタートとなりました。セオリーから言えば岸をめがけて走る左展開なのですが、この時は、半分以上の艇が沖、すなわち右への展開を狙いました。理由は、始めに書いた南西方向に見えた黒い大きな雲でした。アウトサイドリミットマーク寄りから出て左に伸ばした近藤・田畑組でしたが、第1風上マーク回航のトップ艇団は、右から出てきました。上げ潮よりも引き潮のほうが潮流が弱く、岸に行くメリットよりも風向変化を優先した判断に軍配が上がりました。

第2レース、風向240度に合わせてマークがセットしなおされました。風速は9から11メートルと上がってきました。1回のゼネラルリコールの後、黒色旗のスタートで、アウトサイドリミットマーク寄り10番から出た近藤・田畑組でしたが、ラインをオーバーしていたらしくBFDの失格になりました。並んでいた時に風下にイタリアが入って来ました。そのイタリアよりも鼻先を出そうとしたこと、向かい潮が弱くなっていたこと、近藤・田畑組を含め8艇ものBFDの失格艇を出すほど、ライン全体が押しあがっていたことなどが原因でした。失格してはどうしようもないと言われるかもしれませんが、イタリアよりも鼻先を出してスタートしようとした強気は評価できます。この様なことが一度でもあると、今後、イタリアは近藤・田畑組の側に近寄るのを嫌うようになるでしょう。
レースは、左に展開したグループより、右に展開したグループが右から入ってくるパフをつかんで風上マークを上位で回航しました。左展開の近藤・田畑組の風上マーク回航順位は、失格したレースでしたがこれまでのワーストでした。

第3レース、潮の流れが変わり、風向と逆になって波が高くなりました。風向、風速、共に安定し、レースは風の振れに素直に対応して走ればよい、スピード競争となりました。スタートが良く、ちょこまかとタキングをせずに落ち着いてコースを取った近藤・田畑組は風上マークを5位で回航しました。リーチングで2位に浮上したのですが、二回目のクローズホールドでスピード負けし、7位に落ちてフィニッシュしました。
2レース目に上位陣の中で、近藤・田畑組の他にBFDの失格艇が3艇あり、また、予選レースを堅く走ったのが今になって効いて、トータルで5位に上がりました。

男子の第1レース、本部船寄りの集団の中で、出遅れ気味のスタートをして風下艇に突き上げられ、苦しくなった原田・吉田組は、タッキングをしてその場を逃げようとしました。結局スターボード艇と接触し、720度の回転をしてペナルティーを解消しました。これでリズムを崩したのでしょう、第1レース、25位、第2レース、27位、第3レース、19位とスコアーを大きく崩し、トータルで18位に後退しました。集団の中でタッキングをし、スタート直後、まだバラけていないスターボード艇の中をかき分けて行く、無事通り抜けられたとしても幸運でしかなく、接触は必然的だったと言えます。彼等のこの様なケースを見るのは、実は初めてではありません。冷静沈着を心がけ、賢く、したたかな行動がとれるセーラーに早くなってほしいと思います。

一昨日から風が吹き出し、強めの風が今日で三日続きました。このコンデションで世界の選手と四つ相撲がとれ、力負けしない走りができて、初めてトップセーラーの仲間入りできると私は思います。少しと言えば嘘になるかもしれません。私は敗北感を感じます。「表彰台に上がることを目標にする」と3月の遠征出発前に言った自分の言葉を厳しく受け止めています。この様な時、私は同じコンデションが続いてほしいと願います。そこでの戦いぶりからヒントを得たいからです。

明日の女子メダルレース、そして10位以下のレースに出る男子もぜひ全力で戦ってほしいと思います。そこから必ず、次の光が見えてくると信じています。

6日目終了時点
原田・吉田組 18位
近藤・田端組 5位

公式サイト:2010 Delta Lloyd 470 Class World Championships
http://470worlds2010.com/

Team ABeam スタッフ

ファイナルシリーズ2日目になりました。
朝、宿舎の窓から見えるパブの広告用フラッグは激しく揺れています。
いい風です。曇りのち雨のち晴れ。気温17度。
ここ『スヘファニンゲン』は北緯52度30分、北海道稚内よりも北にあります。
夏といっても肌寒く、海上は更に寒い。今日もフル装備。午前10時、ドックアウト。
と同時にスコールに見舞われました。出鼻をくじかれるような激しい雨。
ああ、カメラが…。
風は22~25ノットはあります。波高は2~3m位ですが、相変わらずの強い潮と大きなうねり。
今日のプレスボートは上出来です。
このバンピーな海でも縦横無尽に疾走してくれるのです。有難い。

今日の海面も選手たちには手強いコンディションでしょう。
ですが、我々ジャーナリストにとっては最高のコンディションとなりました。
3レース、いずれも白熱した素晴らしいレース展開が繰り広げられたのです。
「ワールドカップ以来の興奮だね!」と、
プレスボートの手配に相変わらずてんやわんやのオーガナイザーは、自画自賛。
舞台裏は気の毒なぐらい、未だドタバタとしています。

アイセル湖畔のメデンブリックにあったナショナルトレーニングセンターをここに移設した
意味が判ったような気がします。
まさしく世界レヴェルで戦えるセイラーを育成するのに、ここは格好の場所だったのです。
コンスタントに強い風が吹き、これほど潮が悪く複雑な海域でトレーニングを重ねているオランダの選手たちは
メキメキ腕をあげてきました。
欧米の選手たちも、みな同じような条件の海面を選んでトレーニングを積んでいます。
むしろこういう剛健な兵たちを相手に世界の舞台で戦っている
『チーム・アビーム』の選手たちを誇らしく思うのです。
体格、体力ともに他国の選手たちに比べて決して優勢とはいえません。
しかし、それを補えるプラスの実力をつけるべく、過酷な冬の座間味での合宿を重ねているのです。
その効果が出ていないとは、到底思えないのです。
明日は最終日。メダルレースがあります。
まだまだ彼らは戦い続けていきます。最後まで、悔いのない試合を続けてほしいと思います。

現地レポート:塩澤朋子/PHOTOWAVE
写真:添畑薫/PHOTOWAVE

小松 一憲

天気は曇りのち晴れ、南西の風8から11メートル、文句ないコンデションでした。9時半に出艇、レースは11時に開始され、3レースをすんなり終えて3時半に帰港しました。

潮は第1レースの時間帯が引き潮。南西の風では、クローズホールドで、ほぼ正面から流れてくる向かい潮となります。第2レースが干潮の潮止まり。第3レースは上げ潮に転じて後方から流れる追い潮になりました。風に向かって左側に岸があり、岸から約1500メートルを境に海水の色がはっきり違っています。これだけの情報で、経験ある人(選手)であれば、潮の流れに対する基本的な注意とコース取りがすぐに頭に浮かぶことでしょう。

簡単にそれを書きあげると次のようになります。
*第1レースはスタートの時点で凹まないように注意する。上マークでのマークタッチに注意し、下マークでは、ジャイブのポイントを間違えないように、そしてスピンを下す動作は早めに開始すべきである。リーチングでは上り気味に走って良い。クローズホールドで岸寄りの海面を使って走り、ランニングでは沖寄りを走る。
*第2レースは、潮流よりも風の振れに合わせて素直に走れば良い。
*第3レースは、スタートで押し上げられるので早すぎるスタート(OCS)にならないよう注意する。リーチングでのラフィングは危険で、膨らみすぎに気を付け無ければならない。風向と潮流が逆の為、波は高くなる。クローズホールドは沖寄りの海面、ランニングで岸寄りの海面を走る。
机に向かって書けば簡単なことなのですが、実際に海に出てのレースとなると、競争することに気を取られて、この簡単なセオリーを忘れてしまうから不思議です。

第2レースは潮止まりの時間だったので、岸側の空に見えた黒い雲を優先して考えるべきでした。今日の3レース、まとめて走ったのは男女共に地元オランダの選手でした。強風に強い選手達で、この海面での練習量が多く、海面を良く知っているとも言えるのですが、ここはそれほど複雑ではありません。ただ、基本的なセオリーをはずさないだけのことだと私は思います。
今日、男子は32(第2風上マーク回航での沈)・9・7位、トータル11位、女子は12、5,9位、トータル6位、けして悪い成績ではありません。ただ頂点に目標を定めるとまだまだ物足りないのです。

文句無いコンデションの中で行われた今日のレースで、選手の力量がはっきり判りました。強風域でのクローズホールドのスピード、波長が短く高い波の中でのランニングのスピード、どちらも、そのコース取りを含め、まだまだであることを見せつけられた思いがします。とは言え、男女共にきらりと光るところもありました。昨年に比べ良くなったところは良くなったところとして認めたうえで、謙虚に、これからどの様に、この壁を越えて行くのか考えます。

試合が終わっての総括のような報告になってしまいました。しかし意気消沈しているわけではありません。明日の3レースと言わず、明日のレースが始まる前のわずかな時間でもジャンプアップするきっかけをつかむかも知れません。可能性を信じて一生懸命やる、後にも先にもそれしか無く、私の全てです。

5日目終了時点
原田・吉田組 11位
近藤・田端組 6位

公式サイト:2010 Delta Lloyd 470 Class World Championships
http://470worlds2010.com/


Team ABeam スタッフ

ファイナルシリーズ1日目、ゴールドフリート男女とも
3レース行われました。
朝6時半の時点では快晴、しかしあっという間に雲が広がり、雨もポツリポツリ…
昨夜は星空が広がっていたので、少し期待したのですが。。。。
やはり、セーリングの写真や映像は太陽の光が欲しいのです。
とはいうものの、荒れた北の海だからこその画も捨てがたいのですが。
雲間から時たま射す光が、一層の迫力を出す場合もあります。
勝利を確信したのでしょうか、吉田選手の白い歯がこぼれます。

午前10時気温17度。最高に上がっても20度ぐらいまでです。ここ2~3日
ずっとこんな気温が続きます。あの30度越えの数日は奇跡だったに違いありません。
風は20ノット強、いっとき28ノットのガストが入って。

慣れているとはいえ、コミッティはこの風と波と潮に悩まされ続け、レース日程の混乱を何とか最小に押さえようと努力している様子が、手に取るように伺えます。
プレスボートの手配も然り。ほとんどがボランティアの方々で支えられているので、
本音を言うと当たり外れがあります。
今日は昨日までのボートが使用できず、オーガナイザーは配艇に大わらわ。
やっと乗れても、ほかのジャーナリストと取材対象が違うと、そこで混乱が…。
自分たちだけならば「日本チームだけ追っかけて!」で済みますが。
望遠レンズばかり使用するカメラマンはズームレンズを使うカメラマンと一緒に乗れば、お互い撮りたいものも撮れません。
どんな大きな大会でも、裏方は大変です。

さて、中盤を超えて、大会もいよいよあますところ2日。やはり地元の選手に有利なようです。
女子でいえばオランダのリサ・ウエスタホフがトップを走り、
昨年の覇者、イタリアのジュリア・コンティが追いあげます。
近藤・田畑組はそこにどこまで食い込む事が出来るか、後半の見所です。
原田・吉田組もメダルレースまであと一息、追い上げてくれることでしょう。

このディズニーランドのホーンテッドマンションのようなクラシカルな建物は、
今回の「チーム・アビーム」の宿舎です。
昨日で数日前に寸胴鍋2杯に作り置きしておいた、かの有名な「チーム・アビーム特製カレー」
(小松監督の考案だそうですが、これ絶品です!)を食べ終えたので、
気分を変えて、今日の夕食は中華料理のテイクアウトがズラリ。
試合中は時間も手間もそれほど掛けられませんが、食事時は唯一の楽しみです。
美味しいものは幸せにしてくれます


現地レポート:塩澤朋子/PHOTOWAVE
写真:添畑薫/PHOTOWAVE

小松 一憲

朝から低い雲が、大変な速さで流れ、強い風が吹いていました。数日前から強風が予報され、スケジュールの遅れは今日で一気に取り戻せるのではないかと、誰もが期待したのではないでしょうか。レースの開始時間は、10時からと、前日よりさらに一時間早やまりました。それに合わせてハーバーに行ったまでは良かったのですが、今度は風が強すぎるということで、「一時間陸上で待機」の信号が出ました。スケジュールから言えば、昨日までの三日間で6レースが行われ、今日から決勝レースが始まる予定でした。しかし男子は5レース、女子は4レースしかできていません。この大会は予選レースが6レースに満たない場合、4日目(本日)まで予選のレースをおこなうと規定されています。男子の予選の残り1レース、女子は2レースをおこない、一旦陸上に戻して成績を集計する、その後、男子上位40艇、女子31艇で新たにグループ分けし、決勝のレースをおこなうことを考えたのでしょう。1時間遅らせた割に風速の変化は無いまま、9時30分に出艇しました。ところがハーバーの中で沈をする、スタートラインまで行く間にマストを折る、スタート前の沈艇続出にレースコミッティーもひるんだのでしょう、11時に陸上に戻るよう指示が出されました。風は9から14メートル、浅い水深に加え、風向と逆に流れる潮流の影響もあって、波長の短い高い波が立っていました。沈艇の多くは、この波に刺さって、あるいは刺さるのを避けようとしてのトラブルだったと思われます。陸上に戻ってくると、マストやティラーを折った艇、ガスケットを剥がした艇で溢れていました。
その後は、陸上で待機すること6時間、風が収まるのを待って夕方18時に出艇しました。私は女子のレースを見に行ったのですが、19時20分より風向240度、風速4.5から7メートルのコンディションで1レースをおこなうことができました。男子は、聞くところ、スタート前に風が落ち、スタートはしたものの、向い潮で艇が進まず、第1風上マークへの到達に時間(帆走指示書上、ターゲットタイム30分)がかかり、キャンセルされたとのことでした。

近藤・田畑組はアウトサイドリミットマーク寄り、左から8番の位置でスタートしました。スタートラインの風下にいた私には、良いタイミングでメインシートを引いて出て行ったように見受けられたのですが、30秒後に逃げのタッキングをして右に出て行かなければならなかったところをみると出た位置が、向かい潮を計算できずに凹んでいたと思われます。フィニッシュしてから聞けば、「風下、風上共に多くの艇がかなり前に出ているように見えた」という感想でした。実際は早すぎるスタートをしてOCSと判定された艇は1艇だけでしたから、おおきく凹んでいたことが想像できます。向かい潮の強い右の海面に展開しながらも第1風上マークの回航は11位でした。大多数の艇は、岸寄りの向かい潮が弱くなるところまでスターボードタックを伸ばしていました。潮の弱いところをはずさずに風の振れに合わせて走り、潮に押し戻されるのを計算して風上マークにアプローチするという、向かい潮のセオリーとも言うべきコースの取り方をしていました。11位で回航できたのは、走りが良かったからと言えるでしょう。2回目のクローズホールドは、しっかり左に展開し、6位に上がってきました。スタートする前のプランと、それを生かす為のスタートが、今一つうまくいっていないことが第1風上マーク11位回航の原因を作っていたと思います。残り、二日の決勝フリートレースは、レースの組み立て方について良く考え、ワンランク上のレースをしてくれることを期待します。

第2レースは、女子の海面も風が弱くなり、キャンセルされました。ハーバーに戻ってきた時には9時を回っていました。この様な時間に帰港することは、ヨーロッパのレースでは珍しくありません。サマータイムと高い緯度のおかげでしょう。今日一日を振り返り、「セーリングはテレビ・新聞にそっぽを向かれても仕方ない、メディア受けしない競技」だということを実感します。しかし、自然相手だけに奥が深く、人を虜にして止まない競技であることも、午後7時を過ぎ、快晴となった北海を鮮やかなオレンジ色に染めて沈む夕陽を見ながら思いました。



Team ABeam スタッフ

4日目、今日から決勝シリーズに入る予定です。
昨日とは打って変わって海は荒れています。昨日通り過ぎた前線の影響でしょうか。
それとも新たな暴れ者が停滞しているのでしょうか。
ハーバー近くの木々の葉は裏側に太陽の光を受け、銀色にざわめいています。

男子も女子も11時のスタートに合わせて其々の海面へ。
しかし、風は弱まるどころかますます上がってきました。ドックアウト直後は20ノット強はありましたが、
その後30ノットまで上がってきたのです。
おまけに風向と潮の流れが逆です。波高は4~5メートルほど、うねりはかなり強く一筋縄ではいかないほどに荒れてきました。
転覆する艇も続出です。
レース海面に辿りつく前に、マストが折れ、敢え無くリタイアする女子チーム。
プレスボートとすれ違うと「折れちゃった…」と首をすくめて笑う、明るいリタイア。前向きです。

我らが「チーム・アビーム」の選手たちは、このくらいの海では、びくともしません。
冬の座間味合宿で培った自信が彼らの強みです。

とはいえコミッティはお昼前に諦め、レースキャンセルになってしまいました。
午後遅くになると風が弱まるとの予報を頼りに、夕方まで陸上待機です。
皮肉なものです。昨日まで風が弱くてレースが出来ず、今日は強すぎて出来ません。
自然と折り合うのは至極困難なことなのですね。
お昼前から夕方まで約半日近く、こういう場合、選手たちはどのようにして時間を過ごすのでしょうか。
チューニングは終わったし、洗濯や買い出しは昨日済ましたし・・・。

サッカーに興じるもの、ぼんやり犬と戯れるもの、おしゃべりに花を咲かすもの・・・。
今日はいつ再開するかもしれないと皆ハーバー付近から離れません。
結局レース再開のコールがあったのは午後6時半、まだまだ太陽は高く、真昼のようです。
風は10ノット以上はありました。
ところがたちまち風が落ちてきて4ノットまでに、それに加えて例の潮が2ノットの速さで流れます。
女子2クラスのレースは何とかこなしましたが、遂に午後9時(夜です)全てのレースはキャンセルされました。
これで、男女とも5レースずつ消化したことになります。
原田・吉田組は12位で、近藤・田畑組は6位で、明日からの決勝シリーズはゴールドフリートで戦います。

今日の日を一言でいえば『我慢の1日』。シャワーを浴びて食事を造って食べたらもう10時過ぎるでしょう。
夜9時には寝てしまう吉田選手、10時以降起きていられないと云っていた原田選手。
大丈夫かなあ…と要らぬ心配がよぎります。
選手の皆さん、本当にお疲れ様でした。
明日は午前11時スタート、3レースの予定です。


現地レポート:塩澤朋子/PHOTOWAVE
写真:添畑薫/PHOTOWAVE